屋根リフォームにかかる費用と工事の種類について
屋根は住まいを雨や雪、強い日差しから守る重要な役割を担っています。しかし、年月の経過とともに劣化は避けられません。「屋根のリフォームにはどのくらいの費用がかかるのか」「どんな工事方法があるのか」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。今回は、屋根リフォームの費用相場や工事の種類について詳しく解説していきます。
屋根リフォーム工事の種類と費用
屋根リフォームの平均費用は100万円程度ですが、選択する工法や材料によって実際の費用は大きく変わってきます。それでは、各工事方法の特徴と費用について詳しく見ていきましょう。
屋根塗装工事の特徴と費用
屋根塗装は、屋根材の傷みが少ない場合に適した工事方法です。総額15万円から80万円程度と比較的手頃な費用で施工できますが、塗料の選択には注意が必要となります。安価な塗料を選んで初期費用を抑えても、塗り替えの頻度が増えることで、長期的にはかえって総額が高くなってしまう場合があるのです。
また、塗装は既存の屋根材の上から行う工事のため、屋根材自体が大きく劣化している場合は対応できません。そのため、工事前の入念な調査で屋根の状態を見極めることが重要です。
一方で、塗料の種類によって費用を調整できる点はメリットといえるでしょう。最もコストパフォーマンスに優れるシリコン塗料(1缶15,000~40,000円、耐久年数5~7年)は長年人気があり、紫外線対策として高耐久のフッ素塗料(1缶40,000~80,000円、耐久年数7~10年)を選ぶ家庭も増えています。
そのほかにも、ウレタン塗料や無機塗料など、予算と耐久性に応じた選択が可能です。また、工期は約2週間と短いため、短期間での工事ができます。
カバー工法(重ね葺き)の特徴と費用
カバー工法(重ね葺き)は、既存の屋根がスレートやガルバリウム鋼板などの平板屋根材であれば施工が可能な工事方法です。屋根材は劣化しているものの、下地までは傷んでいない場合に適しており、費用は総額60万円から250万円が目安となります。
カバー工法(重ね葺き)は換気に関する課題があり、屋根内部の湿気対策として換気口の設置が必須となるため、その分の追加費用が必要です。また、屋根の重量が増加するため、耐震性への影響を考慮する必要があるでしょう。
しかし、既存の屋根を撤去する必要がないため、解体・廃材処理費用が不要で総費用を抑えられる利点があります。工期も比較的短く済むため、人件費の削減につながる点も魅力です。さらに、新旧の屋根材が重なることで、断熱効果や防音性能が向上するというメリットもあるでしょう。
葺き替え工事の特徴と費用
葺き替え工事は既存の屋根材を完全に撤去し、新しい屋根材へと取り替える本格的な改修方法で、総額70万円から260万円ほどかかります。屋根リフォーム方法の中では最も高額な工事となり、廃材の処分費用も必要です。
また、工事中は大きな音が発生し粉じんも舞うため、近隣への事前の配慮が欠かせません。とくにアスベスト含有の古いスレート屋根の場合は、アスベスト処理費用として1平方メートルあたり2万~8万5,000円の処理費用が必要となるため、予算を組む際に注意が必要です。
一方で、葺き替え工事は防水シートを含めた屋根全体の刷新が可能なため、長期的な耐久性が期待できます。また、最新の軽量屋根材への交換により、地震に対する建物の安全性を高められる点も大きなメリットです。
リフォーム費用を抑えるポイント
塗装、カバー工法(重ね葺き)、葺き替えのいずれの工事でも、足場の設置が必要となります。30坪ほどの一般的な住宅の場合、約15万円の追加費用がかかりますが、外壁工事と同時に施工することで、この足場代を節約することが可能です。屋根と外壁のメンテナンス工事を別々に行えば費用が2回分必要になりますが、同時に行うことで1回分に抑えられます。
費用を抑える方法として、補助金制度の活用も検討しましょう。断熱塗装や遮熱塗装などの省エネ効果の高い工事や、軽量な屋根材への葺き替えによる耐震化リフォームを実施する場合、地域によって補助金の対象となる可能性があります。また、市区町村内の施工業者に依頼する場合、工事全般が補助金の対象となるケースもあるでしょう。
さらに、火災保険の活用も有効です。とくに台風や雪などの自然災害による修理が必要な場合、保険が適用される可能性があります。ただし、原状回復のための工事が対象となるため、カバー工法(重ね葺き)などの改良工事は対象外の場合があり、注意が必要です。見積もり依頼の際は、これらの制度の活用についても相談してみるとよいでしょう。
屋根材の種類と特徴
屋根材の選択は、耐久性や住宅への負荷、そしてお住まいの建築様式との調和など、さまざまな要素を考慮する必要があります。ここでは代表的な屋根材についてみていきましょう。
スレート瓦の特徴
スレート瓦には天然スレート、無石綿スレート、セメント系スレートなどの種類があり、材料費と施工費を合わせて1平方メートルあたり5,000円から7,000円程度となっています。厚みが薄い(約5ミリ)ため割れやすく、耐久性が低いことが欠点です。また、着色が落ちやすいため10年に1度程度の塗装が必要となります。
一方で、コストパフォーマンスが高く、豊富なカラーバリエーション(24色以上)から選べるため、見た目の自由度も高いのが特徴です。また、重量が1坪あたり約68キロと軽量なため、耐震性に優れているという利点があります。
ガルバリウム鋼板の特徴
ガルバリウム鋼板は、鉄板を基材としてアルミニウム、亜鉛、シリコンでコーティングしたメッキ鋼板です。材料費と施工費を合わせて1平方メートルあたり6,000円から8,000円程度で、耐久年数は50年以上といわれています。
薄い板のため衝撃に弱く、すぐに凹むことがあるでしょう。また、普及率が低いことから、ガルバリウム鋼板に慣れた施工業者が少ない点もデメリットです。
しかしガルバリウム鋼板は、亜鉛鉄板の耐食性とアルミニウムの長期耐久性を合わせ持っているため、熱反射率に優れています。加工がしやすいためデザインが豊富で、重量が1坪あたり約17キロと非常に軽量であることから、耐震性にも優れている屋根材です。
日本瓦の特徴
日本瓦は、表面処理の違いにより釉薬瓦、無釉薬瓦、いぶし瓦の3種類があります。材料費と施工費を合わせて1平方メートルあたり8,000円から10,000円程度で、葺き替え時には高額な費用が必要です。
また、瓦の接合部に使用する漆喰は定期的な補修が欠かせません。さらに、1坪あたり約165キロという重さは、耐震性の面で課題となるでしょう。
一方で、日本瓦には多くの利点もあります。高温焼成による強度の高さと優れた防水性を備え、耐久年数は50年から100年以上にも及びます。伝統的な日本建築との調和はもちろん、現代的な和風住宅のデザインにも幅広く対応できる美しさを持ち合わせている屋根材です。
まとめ
屋根リフォームは、そのときの屋根の状態により最適な工事方法が異なります。比較的状態の良い屋根なら塗装で対応できますが、劣化が進んでいる場合はカバー工法(重ね葺き)や葺き替えが必要となるでしょう。また、築20年以上が経過している場合は、見た目の劣化だけでなく下地の状態にも注意が必要です。安全で快適な住まいを維持するためには、適切な時期に適切な工事を行うことが大切となります。費用面では外壁工事との同時施工や各種制度の活用で負担を抑えることが可能です。信頼できる業者としっかり相談しながら、長期的な視点で屋根のメンテナンスを考えていくことが重要といえるでしょう。